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久々に小話です
一発書きで山も落ちも意味もないよ!!
ただただ状況を羅列するのが好きなだけなのです
この曲に思いを馳せながらあれこれしたものです
糖分注意!

夢を見ていた。
リタはトルナーレの街を誰かと手を繋いで歩いていた。
その手の主は誰か不明瞭であったが、港に近づくとそれが夫であることが解ってくる。
いつもなら彼は船に乗ってしまい、彼女は手を振り、それを見送るのだが、今夜はそうでは無かった。
手を繋ぐ二人は港を過ぎ、彼女の家まで歩を進めた。
「腹が減った。」
そう言う彼に笑いながら、アップルパイを切ってあげる、そんな他愛のない夢だった。


「くしゅんっ!」
夢は自身の盛大なくしゃみで中断された。
一瞬で現実に引き戻されたリタは思わず飛び起き、肩で息をした。
「んーーーー………。」
隣から低い抗議の声が聞こえ、はっとする。
やばい、起こしてしまっただろうか。
しかし彼女の心配とは裏腹に抗議の声は直ぐに規則正しい寝息へと変化していった。
リタは今更ながらに自分が「何」を枕にしているかを思い出し、顔を赤らめ――とろけそうな笑顔を浮かべた。
リタはふっと息を吐くと再びその枕――逞しい男の腕に頭を横たえた。
絹のような、と称される長い金色の髪がシーツに広がる。
横たわった視線の先では、腕の主である彼女の愛しい夫が目を閉じている。
「格好良い」と自分の夫に使うのは不適切かもしれないが、リタはその顔を見ているだけでにやにやと笑い出してしまう。
リタは手を伸ばし、彼の顎に手をかけた。親指の腹でゆっくりと皮膚をなぞると、無精髭のざらざらした感触が伝わった。旅先では髭を剃る時間もないのだろうか。
トルナーレに帰ってくる顔にはいつからか無精髭が張りついていた。
仮面工房のおかみさんからは、不評を買っていたが。
この雑草を全てむしりとってやりたい欲望にもかられたが、それはやめることにした。
見た目はともかくこの感触は嫌いじゃない。
「…ヴェイタ。」
その言葉が唇をなぞると、胸の中に愛しい感情が込み上げ、恥ずかしさで爆発しそうになり、彼の胸に顔を埋めた。
いつも「旦那様」と呼んでいるから、名前を呼ぶと物凄く気恥ずかしい気分に陥るのだ。
「ヴェイタ」。トルナーレの古語でそれは風を意味している。
強風の日に現れたからそう名付けたのだが、彼の本名が「風漢」だと知ったときには驚き、大笑いしたものだった。
東の大陸の名前はウィンクルムでは使いにくく、今では名乗るときは「ヴェイタ・コバルト」を主に使っている。
それは、彼がリタの夫であるという証明であった。
リタは、ぼそりとヴェイタの寝顔を見ながら呟いた。
「風漢、に戻らないでね。」
返答は無く、寝室には寝息が響くだけである。
それでもいいと思った。
こんな要求を突き付けたら、困らせるのは解っている。
「ヴェイタ」のうちは自分の元に帰ってくるだろう。
しかしそれが「風漢」に戻ったら…。
それはリタが結婚する前からずっと覚悟していることだった。
「病気が治るまででいいから、あたしのところに帰ってきてね。」
リタは夫の左目に口を付けると、自身も眠りの世界に入ろうと目を閉じた。
いつか終わる夢だとしても、せめて今このときだけは幸せな夢に身を委ねていようと思った。


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