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こちらはオリキャラRPGに関する特設ページです
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なんか行き帰りにちまちま打っていた小話
リーザさんとジズがどうしても話が続かなかったので王様とジズにしたらなんか出来た
まぁつまりは巨大な黒い男が二人でとにかく酒を飲んでます
やっぱり私ヘタレ男が好きなんだなぁ・・・と色々再認識です
歴史とか専門でやってたら戦争物の見方変わってきます
かっこいい戦術とか見るとキタコレーーーっ!!とか思いますけどね
とりあえずWWⅡの解釈とか随分変わったよ

どうでもいいですが私はお話書くときは必ず携帯から書きます
というかパソコンの前に座ると何故か文が浮かんでこないんですね
あと通学時間が長いからそれの時間の活用法という意味もある

uisce beatha

琥珀色の液体に浮かぶ透明な個体。
色も質も違う二つの物質。それは次第に混ざり合い溶け合い一つになる。
グラスを傾け室内の薄暗い灯りに透かすと、氷が酒に溶けていくのがよく解る。
天に向かって琥珀色に走る透明な光の筋。
ジズはそれを見て思わず頬が緩むのを感じた。

「何を笑っている?」
店主のその問にジズは無言の笑みで答えた。
緩んだ顔の理由を話したところで、下らないと鼻で笑われるだけだろう。
店主はおかしな奴だと呟きながらそれ以上追及することはなかった。
入り口のドアが軋み、重量感のある足音が店内に響く。
小さな店に不似合いな巨大な体格の男が姿を現した。
「おぅ、ジズ。こんなとこで会うたぁアレだな。」
「おや叔父上。こんなところで偶然ですね。」
こんな所とは随分な言い種だな、店主の視線はそう物語る。
クラスペダにある小さな酒場に、王が御供も連れずにやってくる。
他国の人間が見るとどう揶揄するかは解らないが、この酒場では珍しくもない光景であった。
ヒルトはジズの隣に座り、店主はごく自然な様子で冷えたボトルとグラスを手渡す。
「お前たちみたいなでかい男が二人も並ぶと店が狭くなってかなわん。さっさと出て行け。」
店主の言葉にジズは苦笑し、ヒルトは大声を出して笑った。
グラスに注ぐなんてまどろっこしいと言わんばかりにヒルトは酒を直接ボトルから飲み始めた。
浴びるように酒を飲むという表現がこの男にはよく似合う。

「父が言っておりましたよ。あいつの酒癖を是正しなければこの国は潰れる、と。」
「俺の酒代で潰れるほどこの国はアレじゃねぇよ。」
「王が酒害で死んでしまえば酒代もかからなくて節約になるとも。」
「そりゃレヴィらしい言い方だな。」
ヒルトは高笑いをし、酒のボトルを空にした。
ジズの発言のせいかは定かではないが、次に注文したものは先程よりも一回り小さいものだった。
それでも、きっとこの氷が溶けきるまでに飲みきってしまうのだろうな。
ジズはそう思いながら自身のグラスを傾ける。

「アリオト・ウェルはお付きじゃないのですね。珍しい。」
「あいつが居るとガミガミうるせえからな。飲み過ぎだの一国の王がどうのこうの。抜け出して来た。」
「それは叔父上らしい。私が彼の代わりにお目付け役を果たしてもよろしいのですよ?」
「おめぇまでアレかよ。たまには自由に飲ませろよ。」
「私の言うことに素直に従う叔父上では無いのは解っておりますよ。どうぞご自由にお飲み下さい。叱られるのは私ではなく叔父上です。」
ヒルトは生意気になりやがったなとジズの頭を軽くこづく。
ジズは王宮を離れた場ではヒルトを『叔父上』と呼ぶ。
公の立場ではヒルトは国を統べる王で、自分は一介の隊長でしかない。
公私混同を嫌うジズは務めて忠実な臣下であろうとし、親類という立場に甘えないように心掛けていた。
しかし、公を離れればヒルトは自分にとって幼い頃から可愛がって貰った大好きな叔父なのだった。
「一人でカイムの店で酒飲んでるたぁ…なんかこう、おめぇもすっかりアレだなぁ。」
「覚えておりますか?叔父上が私を初めて此処に連れて来られたときのこと。」
「忘れられるかよ。」
そう言って笑うヒルトの顔は、悪戯を咎められたときの子供の顔によく似ていた。

ジズは14の子供だった。
彼は初陣で中々の武功を上げ、帰路についた。
ヒルトは大人になった祝いだとこの店に彼を連れてきた。
14の少年にとって初めての酒はとても美味いと言えるものでは無かったが、大人ぶりたい少年にとってそれは甘美な誘惑であった。
結果として、誘惑は少年を食らい尽くした。
ジズは中毒直前まで酒を飲んだ挙句倒れてしまった。
店主の適切な処置により大事には至らなかったが、運が悪ければ、アドニア王は身内殺しだという汚名が着いて回るところであった。
恐ろしいのはそれからだった。
空が白む頃、人目を忍ぶように帰宅した二人を待ち構えていたのは、仁王立ちをし、いつもより二重三重に眉間に皺を刻ませた恐ろしい父、そして従弟レヴィの姿だった。
ジズとヒルトは、正座でみっちり5時間ほど説教を食らい、尚且つジズは一週間の外出禁止を食らうというところで話は終息する。

「あんときのレヴィの顔はモンスターよりおっかなかったなぁ。」
「頭は割れそうに痛む上に父の休みない叱責。これに耐えられたら私はきっとどんな拷問にも耐えられるだろうと思っておりましたよ。」
「そりゃ違いねえ。」
二人の声が酒場に響く。
それは王ヒルトとロスト家嫡男ジズではなく、どこにでもいる叔父と甥が思い出に浸るときの笑い声であった。
ひとしきり笑った後、ジズはぽつりと言葉をもらした。
「あのとき、此処に連れて来て下さって本当に良かった。でなければ私は今頃軍に居ることは無かったですよ。」
「あんときのお前はアレだったからなぁ。」
「戦で人が死ぬということは、肌で感じないと解りませんから。」
「だから、誘ったんだよ。それを知ったのは、お前がアレになった証拠だ。」
ヒルトは空のボトルを店主に投げる。
店主はヒルトの顔も見ずに受け取り、新しいものを不作法な客の前に置く。

ジズは初陣にしては確かに良い働きを見せた。
『さすがロスト家の嫡男だ。』そう思われるだけの成果を上げ、勝利の高揚感に酔いしれていた。
夕刻の赤い光に照らされた、自分の足元に転がる「かつて敵だった物体」や「かつて仲間だった物体」を見るまでは。
ジズは胃の内容物を全部吐捨し、それでも全身を襲う嘔吐感は治まらなかった。
凱旋の栄光に包まれても、彼の心は晴れることは無かった。
夕刻になるたびにその光景を思い出し、言い知れない感情が身体中を駆け巡った。
父と母にはつとめていつも通りに振舞っていたが、シーリィンには行き場の無い感情をぶつけて困らせた。
「私は、戦が嫌いですよ。初陣からずっと。そういうところは父に似たのかもしれませんね。」
「それでいいんだよ。おめぇは戦嫌いだけど戦を恐れちゃいねぇ。」
「恐ろしいですよ。失うことも、業を背負わせることも、敵に同じ思いをさせることも。何かを守る為には仕方ない手段だと解っている、それだけです。」
「解ってるんならそんでいい。」
「あのとき、ここで仰った事は覚えておいでですか?」
「いやぁ、忘れちまった。」
ジズにはそれが嘘だと解っていた。
しかしあえてそれ以上追及しようとは思わなかった。

戦は万の敵を殺し千の同胞を失うものだ。
そう言って泣きじゃくる少年に王は言った。
それでも億の民を救う手段になる。
少年がそんなにまでして救う民に意味があるのかと問うと王は言った。
お前やエアもその守るべき民の一人だと。
誰かを救うには力が必要だ。
少年は目の前の力を持つ男に近付けるかと思い、自分の限界を知らずに酒を飲んだ。

ジズのグラスの氷が音を立てて砕けた。
すでに氷はほとんど形を失っており、琥珀色の液体と同一化しようとしていた。
「私は将来外務に就きたいと思っているのですよ。まだ父には話しておりませんがね。」
「あのジジイの後に就こうってのか?そりゃレヴィもアレだろうな。」
「あの二人は水と油ですからね。まぁ巧く説き伏せてみせますよ。それが出来ないと外国との交渉なんて出来ないでしょう。」
「そりゃ違いねぇな。」
ヒルトは快活に笑い声をあげると王の顔をして言った。
「外務か…向いてると思うぜ。おめぇは戦が嫌いだし、おめぇの存在がそんなんだしな。」
「アルナとアドニア。政治で結ばれた二人の子ではあっても、私はどちらも誇りに思っておりますよ。大切な、私の祖国です。」
「そうだな。てめぇは、それでいい。」
「アドニアには相応しくない、ふがいない男だと思われますか?」
「いいや。自慢のガキだよ。男にしとくにゃ勿体ねぇな。」
ヒルトの分厚く、大きな手がジズの後頭部をゆっくりと撫でた。
この手は昔から何も変わっていないと思うと笑いが漏れた。

初めて来たときには足が届かなかった酒場の椅子も、今は窮屈なものになった。
酒の味を覚え、戦い方を覚え、自分の果たすべきことも見えてきた。
もう、何も解らず泣いていた子供ではない。
グラスの中には琥珀色の液体。
二つの物質は完全に溶けて一つになった。
冷たさを失い、味も鈍くなってしまったが、ジズはその味が好きだった。
この液体は自分に似ている。
アルナとアドニア、二つの国の調和の具現化、それが自分の産まれた意味だ。
剣に頼らず、血を見ることなく、民を守る術がこれからは必要だ。
自分の為すべきことは、きっとそこにあるのだろう。
ジズはグラスの中の液体をゆっくりと飲み干した。
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